人がもっとも残酷な瞬間、それは「自分の正義が正しいと思い込んでいる瞬間」だそうです。
カラオケ店がコロナ対策を講じた上で開催したカラオケ発表会で「クラスターが発生した」とデマを流され、経営難に陥ったというニュースを耳にしました。
デマを流されたカラオケ店の店主は情報の元をたどっていき、発端は喫茶店で交わされた「カラオケ店でクラスターが発生したんですって。〇〇さんのところかしら?」という噂話しであったことを突き止めました。
その会話から「○○さんのところでクラスターが発生したんですって」「はっきりとはわからないんだけど○○さんのところは行かない方がいいみたいよ」と、SNS上で常連さんを含めた20人が関わるデマが広がることになりました。
この話しで怖いのは誰も悪意があったわけではない、ということです。
「真偽はわからないけど本当だったら大変だ」「他の人にも教えてあげなきゃ」という、悪意どころか親切心から広まってしまったのです。
もし、SNSではなく顔を合わせて話していたら「本当かしら?」「保健所が入ってないよね」「○○さんに聞いてみましょうか」など、火消しの会話もなされるところですが、文章ではそのような会話はなされず一方的な情報として届けられてしまいます。
このようなことは、誰の身にも起こることですし、自分が加害者になる危険もはらんでいます。例えば自粛警察やデマのリツイートだって行っている人は自分の正義を信じてやっています。その行為がルールを守っている人や無関係の人に迷惑をかける行為だなんて思っていません。
おそらく、このような事態は日常にたくさん転がっているのでしょう。テレビでの調査によると3割の人がデマの拡散に関与してしまったことがある、と答えているそうです。
決して自分の正義を貫いてはいけない、と言っているわけではありません。
自分が正義と信じることが、信頼できる情報や知識に基づくものかをきちんと確かめていますか?ということです。
SNSで色々な情報が飛び交っています。その中には本当のことのような顔をして嘘のことが巧妙に隠れています。
情報の真偽を確認する癖をつけておきましょう。面と向かって言えないようなことは広めるのはやめましょう。そうすることで加害者にも被害者にもならないよう、自分を守ることができるのです。
プリボの作品に「ガールズトーク」というものがあります。
「中学生くらいの女子の噂話は、尾ひれがついて戻ってきたときには違う話になっている」という面白さを、フランス語の歌に合わせて軽やかに踊るという作品です。悪意なく話が変化していく怖さを天真爛漫に踊る女の子とのギャップで描きました。
昔は噂話しは女の特権でしたが今は世の中の人すべてがSNSで「ガールズトーク」を行っています。
自分がそのような拡散に加担しないために、一度止まって考える余裕を持ちたいものです。